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【無名録】14年かけた博士号(産経新聞)

 男女を問わず調理や裁縫、被服など授業で学んだことを、家庭にフィードバックする。親がかりになっている家事を理解し、親子の会話が増える。家族のきずなが強まる。これが家庭科教育の理想という。

 共立女子大学大学院生の安藤美紀子さん(63)はこの理想を論文にし、3月15日に博士号を授与された。

 東京学芸大卒業後は公立小学校で家庭科の専任教師を務めていたが、育児のために離職。その後、学芸大大学院で修士を取得した。「博士も取った方がいいじゃない」。教授の何げない一言で、博士を目指した。平成8年に共立女子大大学院博士課程に入学、すでに50に近い年になっていた。

 「何歳までにというのがないので余裕がありました。でもだんだんと体力的にきつくなりまして」。いくら期限はなくとも10年が過ぎると、家族からも「これくらいでいいんじゃない」「その年では無理なんじゃない」といわれた。

 それでも途中で投げ出すのはスッキリとしない。さらに5年続けた。20代の学生ばかりでも違和感はなく、経験が強みだと思っていた。幅広い視野を持ち、物事を考える。うのみにせず、自身で判断できる。長期に取り組まなければならない博士への挑戦は中高年向きともいえる。

 15年目。授与式で学長から「博士号を生かし、世の中に貢献してください」と励まされた。

 「どのくらいできるかわかりませんが、機会があれば教壇に立ちたい」。受験に必要がない家庭科教育の影はどんどん薄くなっている。半面、調理や裁縫の授業を楽しみにする子供が増えた。「学校と家庭を結びつけ、家族が思いやりを持って生活するための教科。生活の基本は家庭だけで学ぶものではありません」。理想を後進に伝えたい。(将口泰浩)

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